緋色の電球

タカハシカイト

Break and Sure

いつか、昔から知る人間が変わっていくさまを見ていられるのは幸福なことだと書いた。それは正しかった。但しその幸福が、どれほど彼らに対する失望と、自分に対する失望を抱かせるかということに気づいていなかった。

おれは本当にどうしようもない人間で、それは自覚して他人に表明したからといって図々しくも赦されるとかいった類のものではもはやなく、でもせめてその蟻地獄から這いずってでも抜け出そうという気持ちだけでも持っておかなければ今度こそ、これからもずっとただただおかしく歪で生温い絶望に呑まれてしまうだろうと確信していた。それをいつまでも誤魔化している。過去を隠したり、ただ遮ったりして、それでは何の解決にもならず、変わったことの証左にもならない。年齢を重ねれば勝手に色々なことができるようになると思っていた。それは思うだけで考えているという行為とはまったくの別物であった。だからおれは先に足を動かさなければいけないのだ、たとえ目的地が定まらないままでも、行くべき方向から遠ざかる一歩だとしても、もう甘ったれて突っ立っているだけでは何処にも行けないのだ。

 

新しくバンドを始めることになった。おれは他人とやることにも賭けるし、その上で自分ひとりでやれることもやる。あなたを思い描くために振り返るのではなく、引き返すのでもなく。