緋色の電球

タカハシカイト

遅い朝

目覚ましのアラームを止める。誰にもわかられることのない悲しみだけがおれを救っている、そう思いたいだけのただみっともないだけの欲望。それが形を変えて満たされた記憶が夢だったと気付きながら起きるとき、ちょっとした絶望感と怠惰がないまぜになって、もうこれ以上進んだって望んでいたものは得られないような気がする。気の迷い。スヌーズが鳴って、それを止める。ぬるい寝床から出て朝食を食べなければ。でもそしたらおれはどの自分を正気と呼べばいいんだろうか。時々わからなくなる(本当はわかっている)。ぬるい寝床から出て朝食を食べなければ。身体が動かないのは動く気がないからだ。心臓を握る悲しさだけがとくとくとロスタイムを刻み続けている。その蘇生でおれは脈拍を打ち続けるのかもしれない。スヌーズはもう鳴らない。