緋色の電球

タカハシカイト

免許皆伝の巻

過日、わたしは免許センターなる地に降り立った。1ヶ月に及ぶ自動車学校での奮闘の末、ようやく魔王の巣窟へと向かうお墨付きをもらったのである。免許を手にできるか否かという文字通りのラストバトル。結果から言えば魔王は倒れ、わたしは晴れて公道に繰り出す権利を手にした。まったくもって嬉しい限りだ。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、右も左も分からず右往左往し、エンストを繰り返した日々を思い返すとなかなか感慨深い。出来たばかりの免許証を手にしてほくほくで帰宅したのであった。

 

ところで知っていただろうか。世の中には車はオートマチック車とマニュアル車の2種類あるらしい。わたしがそれを認識したのは中学生の時分であった。オートマの免許を取るつもりだと話す他の男子同級生たちを女々しいと一蹴し、「男ならばマニュアル」だと言って譲らなかったY君の熱弁を横で聞き、車に興味らしき興味がなかったわたしは「ほう、そういうものなのだな」と素直に一般常識の類としてインプットして4年余。今思い返せば彼の主張は日本の東京人口一極集中よろしくえげつなく偏向していたが、それすら気付いていなかった2ヶ月前のわたしは自動車学校入校の際にまんまとマニュアルを選択してしまった。これがまた難しく、単純にペダルが多くてしかも操作ミスするとエンスト=一旦停止するという、逆に何故あるのかと存在意義を問いたくなるシロモノであった。あとから聞けば既に日本の9割以上の車がオートマであるそうな。オイ。なんで誰も言ってくれないんだ。そういうことは早く言え。結果、あむぴの恋人であるこの国にマニュアル免許取得者がまたひとり爆誕したのであった。カーチェイスに巻き込まれたついでに爆破される日も近い。

 

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 一応、マニュアル車オートマ車も運転できるそうだが、自分でマニュアル車を購入でもしない限り、やはりほぼそのような機会はないらしい。このステータスが役立つ日は来るのだろうか。或いはこんな風に役立つかもしれない。

 

 

「クソ、奴ら何故この隠れ家が分かった!?」

「そんなこといいから脱出するわよ!  全員ガレージの車に乗って!」

「……ッ、畜生!  この車、クラッチがついてやがる!」

「なんだって、今時マニュアル車なんてモンがまだ残ってたのかよッ」

クラッチの扱いなんて知らねえよ、これじゃ車を出せねぇ……」

 

 

「おいおい、おれを忘れて貰っちゃ困るね」

「「「タカハシ!」」」

「とっとと運転席を空けな!  奴らに追いつかれる前に出るぞ!」

「お前ってヤツは最高だ!」

「しっかり掴まれよ、行くぞォ!」

ブロロロロロロロロ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンストこわい。