緋色の電球

タカハシカイト

つんどけ! たかはしさん

おれのiPhoneには積ん読リストがある。大学に入って物忘れ防止のためリマインダーアプリを使い始めたのが勝手がよく、ToDoリストに加えて積ん読リストを作成した次第である。そこには図書館を彷徨っているうちに見つけた、惹かれる・または読みたいと思った本のタイトルと著者名が列挙されている。

ところで思い返してみると図書館という場所で本を借りる習慣がついてからもう少なくとも10年にはなる。それだけの年月を重ねていればなんとなく自分の傾向も掴めてくるもので、

「一度に3冊以上借りない(3冊目を読む頃には興味が薄れているか疲れているから)」

「出来るだけ作家をバラつかせる(好きでもさすがに飽きるので)」

「そのとき読みたい本・読まねばならぬ本を優先する(モチベが読書意欲に大きく影響するので)」

「借りたのに読めなかった本はすぐに借り直さない(読めなかった時点で現状読もうとする気がないので)」

等の"俺ルール"が存在する。ルールといっても往々にしてそれらはほかでもないおれによって破られ、おれによって罰則が免除されるのでどちらかというと傾向をまとめた取扱説明書みたいなものに近い。ひとり独裁制。実際先日も3冊借りたがそのうち2冊しか読み終わらず、その間追加で別に2冊借りてそちらは両方読み終わるという奇々怪々な読書生活っぷり。文系大学生という実感が湧いてくる瞬間である。

 

そんなこんなで俺ルールに則ってあれを借りこれを返しそれをリストに入れ読んだら消し、とやっているわけだが最近致命的ともいえる問題点が露呈しつつある。なぜかいくら本を読んでも積ん読リストが減らないのである。

なぜか、と書いておきながらもよくよく考えてみれば道理なのだが「そのとき読みたい本・読まねばならぬ本を優先する」という実感に基づいた縛りを課している時点で積ん読とはいわば"2軍"入りした本の集積となる。そこに入ってしまった時点で、「面白そうだけど今読まなくていいや」という判定が下されているわけだ。1軍は常に順番待ちであるだけでなく、自分の興味が広がればそこに割り込むものも現れるし、新刊が入ればまたさらに列は長くなるし、どんどんと生え抜きの有望な新人がその席に座っては読まれていく。そもそも本棚の前でなにを読もうか延々と唸る行為が好きな人間なので、機械的にリストを上から潰していくというのはあくまでどうしても読みたい本がないときの最終手段でしかないのだ。そして怠惰な種類の人類にとって「今読まなくていいや」は「一生読まなくていいや」とほぼ同義である場合が多い。本当に。さきほど2軍と形容したが、その実はそれ以下どころか戦力外通告に等しい。京都人も裸足で逃げ出すメタメッセージ。

そうして今日も積ん読リストはリマインドさせるだけさせて興味を惹かれた本たちにベンチを温めさせておくのであった。今あるリストが全部捌けるのはどれほど先になるだろうか。ていうかこんなことを書いている場合ではない、さっさと次を読まねばならぬ。読みたい本は山ほどあるのだから────

 

そう言うとおれはiPhoneを投げ出し、自室の薄明かりの下で再び読書に勤しみ出すのであった。